ソナーの基本
アクティブ
方位・距離がわかる。位置の極限と能動的な探知が可能。
静粛性に優れていても、アクティブに対抗できる音響ステルスは非常に稀。
パッシブ
受動探知。相手の船体が出す音や、特に高速航行時の放射雑音を拾う。但し、方位などは大まか。加えて、データベースと観測データの比較により、艦種特定が出来る。
また、相手のアクティブソナー探信音を逆探知する事で、遥かに遠くから相手の概略位置を割り出せる。
最大のメリットとして、自身は音を出さないので、相手に悟られる可能性がほぼ無い。
低周波
長距離の索敵が可能。浅海では音の乱反射により機能し難い。装置が大型になり、搭載可能な艦が限られる。
高周波
近距離・浅海の捜索に向く。深海では対応可能な深度にかなりの制限がある。
ディッピング
主にヘリコプターからの吊り下げ式で運用されるソナーシステム。極一部、飛行艇で着水しての運用も 有。基本的には艦艇の搭載ソナーを、ケーブルで吊り下げて使うようなものと考えて良い。但し、小型である分対応できるのは高周波帯のみであり、探知距離は 非常に短い。代わりに、ケーブルを使う性質上、可変深度ソナー的な性質もある為、変温層下までソナー本体を下ろして探知するなどの運用が可能。
VDS
Variable Depth Sonarの略。ブイディーエス:可変深度ソナー。
主に戦闘艦艇が搭載し、ケーブルでソナー体を曳航・変温層下に吊り下げる事で、BDRを大幅に延伸する事を目的とした方式。従来の水上艦等は、変温層によ る影響でBDRが著しく短くなっていたが、VDSの登場により大幅に改善された。また、潜水艦の場合は逆に、変温層上にVDSを浮上させる事で、艦自体を 隠したまま水上艦の捜索が出来るようになった。
欠点としては、長大なケーブルを曳航する都合から、艦自体の機動を著しく制限してしまう事。また、
ソナーの低周波化≒大型化が困難である等が挙げられる。
SURTASS
Surveillance Towed Array Sensor Systemの略。サータス:探索曳航アレイシステム。
音響測定艦が専門で搭載する、巨大な曳航式ソナーアレイシステム。
全長約2kmの曳航用ワイヤーケーブルと、数百mの数珠状ソナーシステム、更に曳航体で構成される。
VDSと比較して、聴音システムとしての規模を大幅に巨大化する事が出来る事が最大のメリット。
1990年より前は、聴音専門でハイドロフォンが曳航されていたが、ソ連製原子力潜水艦の著しい静粛化に対応して低周波高出力のアクティブソナーも装備されるケースが出てきた。
TACTASS
TACtical Towed Array Sonar Systemの略。タクタス:戦術曳航ソナー。
上述のSURTASSを、より小型の水上戦闘艦(主に駆逐艦)でも搭載できるよう、小型・簡素化したもの。1.62km程のケーブルと、242mの数珠状ソナーアレイ、そして曳航体で構成される。パッシブ用であり、アクティブ戦には利用できない。
ATAS
CAPTAS
欧州・タレスグループによって開発されたアクティブ対応版の曳航ソナー。アクティブによる捜索オペレーションに最適化されており、パッシブにも対応可能だが、能力はTACTASSに劣る。
小型艦艇での運用を主眼とし、組み合わせの艦艇備え付けソナーを含めてシステム全体は非常にコンパクトな構成。但し、その分だけ能力も制限されている。
SOSUS
米英共同で開発・敷設された、海底設置型固定式聴音システム。非常に広大かつ長大なパッシブソナーの監視線であり、世界各地の重要な海域で常に耳を澄ませ、潜水艦の動静を監視している。
なお、日本の海上自衛隊でも、旧日本海軍が陸上基地近海の警戒で同コンセプトの設備を運用していた経験を踏まえ、米軍のSOSUSとは別個で、独自に装置を設置・運用している。
ソノブイ
CASS
Command Activated Sonobuoy Systemの略。全指向性の送受波器を有し、音波の送信等を航空機から遠隔制御可能なアクティブソノブイ。
DICASS
Directional Command Activated Sonobuoy Systemの略。ダイキャス。
指向性受波器とコンパスを有し、方位検出を可能とするCASSソノブイ。
LOFAR
Low-Frequency Analysis and Recordingの略。ロウファー。
潜水艦の艦体自体が発する極低周波を探知するパッシブ能力。現代の静粛性に優れる潜水艦では、低速航行やアンブッシュ中に放射雑音が殆ど出ない為、この能力が必要になる。

DIFAR
Directional Frequency Analysis and Recordingの略。ダイファー。
指向性受波器とコンパスを有し、方位検出を可能とするLOFARソノブイ。
VLAD
Vertical Line Array Difarの略。ブイラッド。
DIFARのアレイを、鉛直方向に並べたもの。目標深度の検出が可能。
特殊ブイ
BT
Bathy Thermoの略。
海水温の鉛直分布を調べる。浅深度用と深深度用がある。
SAR
Search And Rescueの略。要救助者の位置を知らせる為、ガイドビーコンを内蔵している。
ATAC/DLCAir Transportable Communication/Down Link Communicationの略。
潜水艦との連絡を中継するブイ。

バッフル
各種ソナーによる探知の死角領域。わかり易い例では、自艦の真後ろ直下(自身のスクリューで何も聞こえない)等。
変温層
海水温が急激に変化する境界層。変温層内では音が歪んでしまう為、変温層の影響を受ける場所では探知が大変難しい。回避するには、変温層の上下でそれぞれソナーを用意する(可変深度ソナーや曳航ソナー等)必要がある。
BDR
Best Depth of Rangeの略。
変温層下200ft(61m)のソナーが殆ど効かない暗黒領域で、これは潜水艦が最も好む深度であるが、この地点を捜索できるソナーの有効範囲の事。つまり、遠距離からこの深度を捜索できる=BDRが長い。変温層を如何に回避・突破するかが鍵となる。
MAD
Magnetic Anomaly/Airborne Detectorの略。
磁気探知機。航空機が搭載するのが通常である為、AnomalyはなくAirborne(航空機搭載)が略称に含まれる事が多い。
巨大な鋼製の船体によって生じる、磁気異常を探知する。但し、チタン製の船体だと効力が落ちる。また、浅深度では反応が出易いが、深度が大きくなるにつれて効力と有効範囲も大幅に減退する。

ブイ
浮標(ブイ)の下に各種装置を吊り下げる事で、目的別に独立して機能させる装置。ソナーを吊り下げたソノブイが有名だが、他にも各種任務用に多種多様なブイがある。通常、航空機にランチャー付で搭載されて、必要なポイントで投下される。
なお、ブイは帯域(チャンネル)を使う為、一度に機能させられる数には制限がある。