N.C.24年 3/21日 22:00
日本国 北海道矢臼別演習場南部 後方陣地 L(リマ)00 


「『ネレイド』、こちら『オブザウルフ』。レーダーに動態目標を確認。座標を送る。」

「『オブザウルフ』、観測データを受領。方位角修正…完了。砲撃を開始します。」

 データリンクで受け取った情報を砲撃コンピューターにそのまま流すだけ。それで勝手に体が動く感触と共に機体も動く。微調整を済ませたアタシのTF-1GLSは、深緑色のボディを木々の間に隠しながら背中に背負った105mm連装榴弾砲を発射する。1…2…3…4…。

 隣には、RPO仙台基地から一緒に来たヒトが乗る、TF-2Eがレーダー測距を続けてくれている。その情報は、リアルタイムで砲弾に送られて中間誘導を行ってくれる。放っておいても勝手に当たる筈。

 今発射した砲弾は普通のじゃない。ウチの"お兄(にい)"が作った特殊な奴。渋々だけど、「使っても良いよ」って。

 そしてアタシは目を瞑り、念じる。

 …「殖えろ」と。



N.C.24年 3/21日 22:00
日本国 北海道矢臼別演習場南部 


 放たれた8発の砲弾は、小さな制御翼を広げて操舵し、指示された目標地点へと飛翔する。

 それは、敵の前線8か所。今まさに、敵軍が進撃を始めている場所。

 しかし敵部隊の間隔は広く、如何に範囲攻撃できる榴弾砲でも
105mm口径程度では到底対応不能だ。

 不能な、筈だった。

 R50番台が割り振られた敵陣、その全ての上空に1発ずつ砲弾が到達した時、それは起こった。

 通常の榴弾では考え難いほどの上空で、パッと炸裂した砲弾が"緑色の眩い閃光"を放つ。それから、ワッと満天の星空のように光の粒が散らばったかと思うと、それら全てが一斉に地へと降り注いだ。

 否、地ではなく、全てが寸分違わず敵軍の兵器達に降り注いだのだ。まるで自ら意思を持つかのように。

 降り注ぐ光の粒の正体は、結晶体の欠片。それが斥力場と落下のエネルギーを纏って、敵を真上から射貫く。

 ARUの前線部隊は、50mも進めずに全て、一つ残らず破壊し尽くされた。


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第5話

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